開催レポート

第3回(2017年11月3日)

 

第3回 盛岡ソフトウェアテスト勉強会 2017年11月3日(岩手県) - こくちーずプロ(告知'sプロ)

 

第3回を迎えた盛岡ソフトウェアテスト勉強会。
今年は盛岡駅西口の「アイーナ・いわて県民情報交流センター」7階会議室で開催されました。
アイーナは昨年の勉強会が行われたマリオスの隣に建つ複合施設。全面ガラス張りが特徴的な建物です。

窓から明るい光が差し込む会議室で勉強会が行われました。

 

今回のテーマは「~じゃじゃ!!『テスト』ってなんだべ?~」とし、テスト初学者や、他のテストのやり方に興味を持つ人に、テストの奥深さを知ってもらう、伝える事ができるような構成としました。

以下、各セッションのレポートとなります。

 

■セッション1:単なる仕様チェックから卒業するために 〜最初に抑えたいキホンのキ〜

池田氏最初のセッションはNaITE(長崎IT技術者会) 代表の池⽥ 暁 ⽒に、「最初に抑えたいキホンのキ」と題して話をしていただきました。「キホンのキ」とはいえ、これからテストを始める人に限らず、現在テストに携わっているエンジニアが、自分のテストについて考えてみる上で参考になる非常に有意義な講演でした。

不具合が市場に与える影響は、会社信用や収益の損失、場合によっては人命に関ることもあることを話したうえで、「それを食い止めるためにソフトウェアテストを行う必要がある」というお話は、ソフトウェアテストを行っていない人は知っておくべき事であるし、ソフトウェアテストを行っている人も改めて意識しておく必要があると思います。

単なる仕様チェックに留まらず、仕様には無い事、仕様外の事にも目を向けるようなテストケースを作成する必要があるため、設計する際にも仕様以外に目を向けて設計する事が重要になってきます。
おススメは、テスト分析とテスト設計においては、意識的に二つを分けることはせず、両方同時に考えるとよいとのことでした。また、テスト分析はマインドマップだけで行うのではなく、仕様書を3色ボールペンでチェックし、マインドマップを描く手がかりとするとよいと説明されました。
赤、青、緑の3色を上手く使い分けて仕様書をチェックし、思い付いた内容と仕様分析を可視化することで情報整理が効率良く行えるとのことでした。

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終始「発想する(考える)」ことが重要であるというお話は、その通りであると思っていますが、これを出来ない人へ向けて自分自身がアドバイスする際の難しさを改めて考えさせられる内容でもありました。

ボリュームも非常に多く、貴重な資料を公開していただいております。今回参加した方もぜひ再度読み返していただく事をお勧めします。

 

 

■セッション2:本当はやさしいユーザビリティ ~現場の事例と改善案~

photo_oikawa01.png地元滝沢市の第三者検証会社である、株式会社ヴェスの及川 知彦 氏は、「本当はやさしいユーザリティ ~現場の事例と改善案~」と題して、現場の事例と改善案を紹介し、ユーザビリティの改善に必要なことについて発表されました。Webサイトフォームでの入力エラーやデジタルカメラの撮影、エラーメッセージの改善など様々な事例とその改善結果を紹介されました。

セッションの中で事例の一つとして、「削除されたようなエフェクトは出ているが、実際は削除されていない」という事例を紹介されました。こういった異常系の操作に関する内容は仕様に書かれないことも多く、単なる仕様ベースのテストのみを実行すると見逃してしまうことがあると述べられました。経験のあるテスターであればテストケースになくても気づいてテストすることもあるが、経験の少ないテスターは手順を追うことに意識がいってしまい、ユーザビリティ関連の問題を見逃すことが多いと説明されました。

ユーザビリティ関連の問題は、発見がスケジュール終盤になることが多く、修正のための予算が少ない、修正の影響範囲が大きいことが多いため、「使う人が満足できるか?解決できるか?」という観点で開発者に問題点の説明をすることが重要であると述べられました。

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最後にまとめとして、テストする際に注意する点として「テスト時に周りを気にしてみること」「仕様自体を疑うこと」「開発者に『仕様です』と言われても素直に引き下がらないこと」などの点を挙げ、セッションを締めくくられました。

テストを始めたばかりの人が陥りがちな、手順と期待結果のみにとらわれて、製品の使いやすさに気付かない、そしてそのままリリースされてしまった製品はユーザを満足させることはできない・・
本講演により、日ごろおこなうテストでユーザビリティに意識を向けられたらと思います。

 

 

■セッション3:「勘と経験」の思い込みからの脱却 - なぜ探索的にテストができるのか -

photo_ban01.png坂 静香 氏には、探索的テストに関する講演を行っていただきました。

経験は自分の中に蓄積された情報で、その情報をテスト対象物の情報と繋げて考えることにより、疑問点を「連想・発想」することが出来る。
そして疑問点を調べることによってテスト対象物の理解度が深まる。
経験(情報)があっても、目の前の情報と繋げられる力がないと「連想・発想」することが難しい。

というお話を聞いて、自分の中の情報を意識して活かすことが大事だと思いました。
「情報を無意識に使用してそれを勘と言ってないか?」
この言葉が強く印象に残りました。
今まで「~をしたらどうなるんだろう?」「なんかここら辺怪しいな~」など、まさに【情報を無意識に使用】していたからです。

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今回講演を聞いて、今までの【勘】は自分の中にある経験(情報)を基に出てきているという事を知る良い機会になりました。

探索的テストに関する講演はなかなか珍しく、また、探索的テストを行う上で「勘と経験」と思い込んでいた事が「蓄積された情報を連想・発想する」という事は目からうろこでした。
こちらも資料を公開していただいているので、あらためてご覧ください。

 

 

■セッション4:宇宙開発とテスト

講演のラストを飾るくまきち 氏には、普段我々が携わっているドメインとは異なる「宇宙開発」に置けるテストについて語っていただきました。

今の世の中では人工衛星によるGPSや気象データなど宇宙を利用した技術が一般の人にも利用できるようになり、身近な存在になってきましたが、一方では、ロケットを打ち上げるのに複雑な軌道計算であったり、過酷な宇宙空間に耐えられるロケットの構造であったり、どうしても知識のない人にとっては難しく、縁の無い分野であるように思っていました。

実際、くまきち氏のお話の中でも、過酷な環境かつメンテナンスができない状態で長時間駆動し続けるためには、すべての開発フェーズで高品質性を求められる、というお話をされていました。

 

しかし、その中で動いているソフトウェアについては、最新技術が搭載されているわけではなく、むしろ、綿密な計算など寸分の誤差も許されない環境のため、古くからある安定した技術を使っているというお話も聞くことができました。

また、製品のテストについて、テストチームを設けずに開発チームが直接テストを行う、といった現場でのテスト環境のお話も聞くことができ、外からではどうしても聞くことのできない貴重なお話を伺うことが出来ました。

普段なかなか聞けない分野のお話をユーモアたっぷりに講演してくださいました。

講演資料の公開版はこちら

 

■懇親会

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盛岡ソフトウェアテスト勉強会の懇親会といえば、第1回から地元盛岡のクラフトビール「ベアレンビール」が定番となっています。(偶然?)

今年は菜園川徳近くの「菜園マイクロブルワリー」で行われました。
ここはベアレンビール直営店で、店内に醸造設備を持っており、店で作られたビールを飲む事ができます。
勉強会の約1ヶ月前に改装オープンし、第1号ビールが完成したのが10月31日、店で提供を開始したのが11月2日との事でしたので、懇親会にギリギリ間に合いました!
当日はベアレン8種飲み放題で、テスト話に大いに盛り上がりました。

 

今年は3連休初日開催という事もあり、どれだけ参加者に来てもらえるか不安な部分もありましたが、蓋を開けてみると当日参加も含め26名と過去最多の参加人数となり、会場も満席の大盛況となりました。
これも、盛岡にお越しいただき、貴重な講演をしてくださった講演者の皆様のおかげだと思っております。

本レポートのさいごに、講演者の皆様、地元岩手を初め、宮城、東京からお越しくださった参加者の皆様、およびご協力いただいた皆様、本当にありがとうございました!

次回開催の際も、ぜひよろしくお願いします!!